シリアスゲームと科学研究

【今週の目次】
1. STEMウォッチ 2. 近況報告

1. STEMウォッチ
私が注目する「科学、技術、工学、数学」の情報を、隔週で紹介するコーナーです。

第4回 「シリアスゲームと科学研究」

2008年、ワシントン大学から「Foldit」というオンラインゲームが公開されて、話題となった。このゲームでは、コンピュータによるランダムな探索だと時間のかかる、タンパク質の立体構造を予測する問題を、誰にでも挑戦できるパズルとして出題している。

Folditのチュートリアル・パズルでは、水素結合の多い方がスコアが出る、などといったゲームのコツを学ぶ。そして訓練を積んだプレイヤー達は、競争して、また互いに協力しながら、実際の科学の問題である、タンパク質の構造予測や設計に携わることになる。このような、現実にある課題の解決を目的としたコンピュータゲームを「シリアスゲーム」と呼ぶ。

【Folditのスクリーンショット】
foldit

現実世界のある種の課題は、ヴァーチャル世界にシミュレートすることによって、訓練・解決に要するコストを低減出来るだろう、というのがシリアスゲームの立脚するアイデアである。

このアイデアが適用できる課題の種類は実に豊富で、特にここ数年は、教育・学習やトレーニング、健康・医療といった生活に密着する分野でのシリアスゲームが、急速に身近なものになった。今後、2020年までにシリアスゲームの市場規模は倍増するとの予測もある。

Folditの成功は、シリアスゲームが教育・学習に留まらず、科学研究そのものへも貢献出来ることを示している。今はまだ、研究分野のシリアスゲームはプレイヤー達自身にとってのメリットが小さく、通常のゲームに競り負けてしまう印象があるが、今後この状況が変わり、研究に欠かせないツールとして使われるようになれば、実に面白いと思う。

【参考サイト】
Folditについては公式サイト(英語)でゲームをダウンロード出来る。このページには、科学的な背景の説明や、出版論文のリストも置かれている。そのうち、Natureなどに掲載された幾つかの論文では、Foldit playersが共著者に加えられている。

本記事ではシリアスゲームとゲーミフィケーションの区別には拘らなかった。脳トレやフィットネスアプリもシリアスゲームの一種と捉えて参考にした。シリアスゲームの市場予測についてはMarketsandMarketsの調査報告書(英語)のサマリーなどがある。

 

【今週の目次】
1. STEMウォッチ 2. 近況報告

投稿者: miurror

韓国高等科学院 (KIAS) 研究員 / 数理科学絡みで色々な研究をしています。最近は人工知能やバーチャルリアリティなどの情報技術を、数学的現象を観測する手段として用いることに関心があります。