4次元立体視について

この記事は、数学カフェのアドベントカレンダー「4次元コンテンツ出展の記録」の、
3日目の記事となります。

本日のテーマは、私たちのVRアプリに取り入れた、
新しい4次元の知覚方法「4次元立体視」についてです。

サイエンスアゴラでは、出展ブースにポスターを貼ってこの方法を紹介しました。
その詳細はまた別の形で発表する予定なので、今回は概要だけサクっと紹介します。

4次元を見る昔ながらの方法

4次元のユークリッド空間 \mathbb{R}^4 の中に置いた物体を観察する際に、
昔からよく用いられている2つの方法は、切り口を見る方法と、影を見る方法です。
どちらも、4次元の情報を3次元に落として捉えるという考え方です。

切り口を見る方法については、今日は触れません。
4次元の世界を舞台にした Miegakure という美しいゲームを開発している方がいますが、
彼は、この切り口を見るという方法を採用しているようです。
リンク先のサイトには分かりやすくて美しい解説動画がたくさんあるので、
ぜひ参考にしてみて下さい。

ここでは影を見る方法を考えます。
4次元空間の景色を1枚の3次元スクリーンに投影し、
その像を眺めることで、4次元の様子を掴もうという方法です。

例えば、4次元空間の中で、普通の3次元立方体を「めくって」みることが出来ますが、
その影を撮影すると、次のような見え方をします。
立方体をめくる様子
立方体の6つの面が同時に裏返っている様子が分かりますか?
内部の向き(パリティ)も反転していて、「裏側」が見えています。

4次元人には、「まつ毛」がある?

私たちが見ているのは、ディスプレイ上の2次元の映像なので、
実際には4次元の景色から、2次元の画像を作っていることになります。
これは粗くみると、次のような変換と同等です。

\begin{bmatrix}X\\ Y\\ Z\\ W \end{bmatrix}\longmapsto\begin{bmatrix} x \\ y \end{bmatrix}=\begin{bmatrix} X/Z \\ Y/Z \end{bmatrix}

さて、この変換には、W方向という特別な方向があります。
この特別な方向へ物体を平行移動してW座標を変化させても、
画像の方には何も変化が生じないため、決してそれを認識出来ないという
ヘンテコな方向です。

4次元人の目には、この特別な方向を定める「まつ毛」が生えていると考えると、
イメージがつきやすいかもしれません。
ただし、「まつ毛」には文字通りの意味はなく、この記事だけの用語です。
(数学的には、線形射影 \mathbb{P}^4 \dashrightarrow \mathbb{P}^2 の中心の直線のことです。)

【概略図】
ac

「まつ毛」を揺らして4次元を見る

私たちの用いた4次元立体視の方法では、
両目に共通の3次元スクリーンを考えることはやめ、
左右の目それぞれで、独立に4次元から2次元の変換を行うことにしました。

といっても、実際のところ、左右の目の「まつ毛」を平行に保っている限り、
共通の3次元スクリーンに映った影を眺めることと、区別が付きません。
つまり、Oculus Riftを通してみても、通常の3次元空間を見ているように感じられます。

そこで、この左右の「まつ毛」の向きをそれぞれ少しだけ傾けることで、
4次元ならではの見え方を提示することを考えました。
これが、私たちがVRアプリで実装した、4次元立体視の概要です。



さて、4次元立体視について、いろいろな疑問が浮かんでくるかもしれませんが、
より詳しいことも、研究と開発の状況に合わせて、随時公開していきたいと考えています。
このアドベントカレンダーでも、実際に私たちのVRアプリを体験した方が、
記事を書いてくださる予定ですので、どうぞご期待ください。

明日は、数学カフェの中の人がマーケティング・PRについて書いて下さいます。

投稿者: miurror

韓国高等科学院 (KIAS) 研究員 / 数理科学絡みで色々な研究をしています。最近は人工知能やバーチャルリアリティなどの情報技術を、数学的現象を観測する手段として用いることに関心があります。